目に見えて衰えた実力

先日、イチローが引退を発表して以来、ニュース番組やワイドショーなどメディアはイチロー一色、愛犬は一弓←関係ないけど、当面は引退余波が続きそうです。

昨年、会長特別補佐に就任し、試合に出なくなった時点で今回の引退はある程度予想されていたし、何より来日してから巨人とのオープン戦を見てもバッティングの状態が悪い、と言うか、目に見えて衰えていたので、開幕2試合で引退するだろうなとは思っていました。

ライトからサードにダイレクト返球して場内をどよめかせていましたが、全盛期はあんなもんじゃない。本当に「糸を引く」という表現がピッタリの、まさにレーザービームのような強肩でした。

帽子を取ると白髪が目立っていましたが、考えてみれば45歳。視力は衰え、反射神経は鈍り、肩が弱くなるのは当たり前です。私なんて老眼なんで遠ざけないと見えにくいですよ、比べるのも失礼ですが。40代になるとそんなもんです。

第一報はやっぱり共同通信

ただ、予想していたとは言え、試合中に「第一線から退く意向」というニュースが流れた時はやっぱり衝撃を受けました。

私はスマホで登録しているニュースサイトのお知らせで知りましたが、配信元が共同通信だったのをご存知でしょうか。

すぐにピンと来たのですが、かつてマスコミとの関係があまり良くなかったイチローは、仲の良い共同通信の記者にしか話さない時期があったんです。各メディアは共同通信の記者を通じてイチローのコメントを又聞きし、報道していました。

まあ、共同通信というのは全国、全世界のメディアにニュースを配信する社団法人なので、自分だけで独占してもしなくても結果的に同じことなんです。

当該記者がそんなことを考えていたかどうかは知りませんが、とにかく他のメディアは共同通信頼みだったことは確かです。

今回の第一報がその記者の特ダネだったかどうかは分かりませんが、文春砲ではなく、弓子夫人のいたテレビ東京でもなく、共同通信が報じたことは非常に合点がいくのです。

想像するに、試合が終わると会見する可能性があることを知って、試合中に配信したのではないでしょうか。通信社として「第一報」にこだわり、ギリギリのタイミングだったと思います。「引退」ではなく「第一線を退く」としたのは、引退を断言できるほどの「裏」を取れなかったのではないかと思います。それでも特ダネを書いた記者は社内で表彰されるでしょうね。日本が誇る世界的スターの引退をスクープした訳ですから。

気さくな対応に拍子抜けしたイチローの取材

ちなみに私もライター時代にイチローを取材したことがあります。

つまらない質問には答えてくれなかったり、無視されることもあると聞いていたので、事前に質問内容から想定問答まで準備しておきました。緊張しながら質問をぶつけると、拍子抜けするほど気さくに笑顔を交えながら答えてくれたのでホッとしたのを覚えています。

印象深い会見でのコメント

深夜0時頃から始まった引退会見は生放送で見ました。

その中で印象深いのが次のコメントです。

今日の舞台に立てたことというのは、去年の5月以降、ゲームに出られない状況になって、その後もチームと一緒に練習を続けてきたわけですけど、それを最後まで成し遂げられなければ今日のこの日はなかったと思うんですよね。今まで残してきた記録はいずれ誰かが抜いていくと思うんですけど、去年5月からシーズン最後の日まで、あの日々はひょっとしたら誰にもできないことかもしれないというような、ささやかな誇りを生んだ日々だったんですね。そのことが、どの記録よりも自分の中では、ほんの少しだけ誇りを持てたことかなと思います

この言葉の意味の捉え方は人それぞれだと思いますが、私は次のように解釈しました。

つまり昨年マリナーズから提示された会長特別補佐のオファーは、現役選手としては必要ないですよと肩を叩かれたことを意味しており、それを受け入れたくない自分と受け入れざるを得ない現実の狭間で大きな葛藤があったと思います。そこには認めたくない自身の衰えや肩を叩かれた悔しさ、逆に拾ってくれたマリナーズへの恩義や愛着もあったでしょう。

その中で唯一の光だったのが今回、東京ドームで行われる2試合。球団としてはイチローへの感謝と敬意から最後の花道を準備してあげようという意図だったのでしょうが、イチローはこの2試合で結果を出してその後も現役生活を続けたいと考えていたのではないでしょうか。

一縷の望みを抱いて懸命に孤独なトレーニングに励んできたものの、オープン戦から結果を出せず、受け入れがたい現実をついに受け入れた、そういう意味だったのではないかと思います。試合に出ずにトレーニングだけしても試合勘は鈍るし、ブランクの影響は想像以上だったと思います。

スターほど引き際が難しい

球団としては若手を育成する必要があるし、いくら功労者のイチローとはいえ、実力の落ちた元スターを使い続けることはできないので、東京ドームでの2試合は花道として格好の舞台だったのでしょう。特に2戦目は8回の第4打席までよく我慢して使ってくれたと思います。正直、今のイチローでは打ちそうな予感が全くしませんでしたからね。8回裏にいったん守備位置に就いてから交代を命じたのもイチローへの敬意でしょう。

どんな世界でも華々しい活躍をした人ほど、引き際は難しくなります。イチローが昨年5月から孤独なトレーニングをしてきた10カ月は、本当に尊い時間だと思います。やるべきことをやり切ったからこそ、最後の清々しい表情になったのでしょう。

左遷された私とは全く違いますが、やりたいことをできない葛藤は少しだけ分かる気がします。